10月6日付の本紙が発行されるのは、いったい何十年ぶりになるのだろう。少なくとも、筆者は1997年の入社以来初めてのこと。本来ならばというのもむなしいが、夕刊が配達される時間帯には、御坊市の小竹八幡神社で宮入りが始まり、若衆や観衆の熱気であふれていたはずだ。日高地方最大の御坊祭、例年は本紙も休刊になり、6日付の新聞は発行されないのだが、今年がいかに異常かを物語っている。憎らしい新型コロナウイルス、祭り好きの多い日高地方の人々からは一層嫌われ者になっただろう。

 毎年参加している印南祭も神事のみが行われ、にぎやかな屋台や神輿のお渡りは中止となった。9月に入ると本番へ向けた練習が始まり、日高地方どこでも太鼓や笛の音色が響いたが、今年は静かすぎる夜が続いている。祭りが中止となるのは、昭和天皇の病状が悪化した1988年以来のこと。当時中学2年生、何より祭りが好きだったので、あの寂しさは今でも覚えている。今は40半ばとなり受け入れられるが、祭り好きの若者たちの気持ちを思うとやりきれなさも残る。

 少し心配するのは、今年がきっかけで秋祭りが衰退してしまわないかということ。祭り好きの多いこの地方のこと、いらぬ心配かもしれないが、御坊のように人がたくさん集まる地域ばかりでもない。近年は少子高齢化で祭りに参加する人が減っているのは、どの地域にもいえる課題の一つだろう。祭りの衰退は地域の衰退ともいえる。地域の希薄化が言われる中、顔の見える関係作りなど祭りが果たしている役割は意外と大きい。コロナ禍を乗り越え、来年は今年の分も盛大に若衆の掛け声が響くことを願う。(片)