1980年代ごろから梅どころのみなべ町などで、梅の木が枯れてしまう生育不良が発生した。葉が黄色くなり始めて樹勢が低下し、枯死する木もある。田辺市内で初めて確認され、被害は一気に拡大。同町では03年に被害本数が最多となり、全体の植栽本数の12%に当たる6万8302本までに広がった。当時、農家らからは「死活問題」と先行きを不安視する声が聞かれた。

 行政などの関係機関は植物の病気、大気などの環境変化、栽培の3つについて調査してきたが、未だに原因が究明されていない。しかし、ピークだった03年を境に被害本数は減少傾向へと転じ、現在では発生がほとんどなく、農家の間でも過去の話になりつつある。ただ、減少に転じた理由についても判明されておらず、関係者らも首をかしげるばかり。中には「梅の木自体が樹勢を低下させる何らかの原因に慣れ、対応できるようになったのではないか」という見方も。

 梅に対する懸念は生育不良だけにとどまらず、最近ではクビアカツヤカミキリの被害が拡大している。幼虫が梅や桜などのバラ科の植物の木の中に入って内部を食害する外来種で、県内では昨年11月、かつらぎ町で初めて被害が確認された。日高地方ではいまのところ確認されていないが、紀北地方を中心に広がりつつある。

 生を受けている生き物は常に多かれ少なかれ何らかの危険がつきまとう。直面する危険を克服しても新たな脅威が襲ってくる。人間の世界も同じで、今は新型コロナウイルスの拡大に怯えている。梅も害虫などに脅かされながら生きていると思うと、同情せざるを得ない。(雄)