県は21日、御坊市塩屋町南塩屋の農業試験場暖地園芸センターが京都教育大学との共同研究で辛味果実が発生しない新品種のシシトウ「ししわかまる」を開発したと発表した。今月9日付で品種登録出願公表。シシトウは栽培条件によって辛味果実が発生する問題があった。新品種は風味を残したまま辛味がないうえに、収穫量なども在来の優良品種と同等で、新たな県産品として期待されている。

 シシトウはトウガラシと同じナス科トウガラシ属の野菜で、辛味成分のカプサイシンを合成する遺伝子を持っており、高温、乾燥、水分などの環境によるストレスで辛味果実ができることがある。暖地園芸センターでは2013年から在来品種「紀州ししとう1号」に辛味成分を合成しない特性を持つピーマン品種「京ひかり」を交雑し、「DNAマーカー選抜技術」を使っての選抜を繰り返し、最終選抜と生産力検定を経た新品種を開発。今年3月、品種登録出願を申請していた。

 ししわかまるは辛味成分を合成する遺伝子自体を持っておらず、辛い果実ができることはない。果実の大きさ、色、形などの外観や収穫量、秀品率は紀州ししとう1号と同等となっている。

 県内でのシシトウ出荷量は2018年で約300㌧あり、全国3位。山間部での栽培が多く、栽培面積は日高川町などを中心とする日高地方が県内で最も多く3・9㌶。有田、和歌山などでも栽培されている。県によると「辛味果実のできないシシトウは全国でもほかにないのでは」と話しており、すでに今年は県内各地で試験栽培を実施中。来年から本格的に苗を供給していけるよう準備している。

 仁坂吉伸知事は「辛味を求める人もいるが、辛いのがダメという人も増えているので、そういう意味ではおもしろい。和歌山の特産になっていけば」と期待を込めた。

写真=新品種の「ししわかまる」