国の文化審議会が20日、御坊市藤田町藤井地内の「瀬戸家住宅」の主屋、座敷、表門など7件の国登録有形文化財(建造物)新規登録を文部科学大臣に答申した。市内の登録有形文化財は8カ所27件となり、御坊・薗地域の寺内町周辺以外では初めての登録。1カ所で7件の登録も過去最多で、「集落の歴史的景観の核となる大規模な和風住宅として価値が高い」と評価された。

 登録されるのは、主屋、座敷、旧女中部屋及び風呂、文庫蔵、穀蔵、西蔵、表門及び塀の7件。これまで市内では1カ所で5件が最多だったが、上回った。

 瀬戸家は天正年間に当地に来往したと伝えられ、17世紀後半から明治末年ごろまで酒造業を営んだ。江戸時代後期には大庄屋を務めていた。12代の瀬戸健三は1920年に南海紙業㈱(現在の旭化成工業㈱和歌山工場)を設立して社長に就任し、大正後期に現在の住宅を建設した。

 主屋は木造二階建て、入母屋造り、桟瓦葺きで東西9間、南北8間の規模。東側に入口を構え、通り土間、背面側は台所でかまどや流しが据えられている。1階の最も上手には八畳の座敷があり、床の間が設けられた書院座敷となっている。2階には土間に設けられた階段を上り、南西隅には寄木張りの床など凝った造りの洋室が設けられている。南側の窓からは日高川を望むことができ、接客に用いられたとみられている。

 座敷は主屋の西側に建ち、南西に茶室部を増築。主屋と同様に上質な建築。柱や長押(なげし)などにはヒノキの目の詰んだ良材を用いている。

 旧女中部屋及び風呂は主屋とほぼ同時期の建設と考えられ、風呂はタイル張りで五右衛門風呂の釜を据えている。

 文庫蔵、穀蔵、西蔵は屋敷北側に並び建つ重厚な土蔵群。漆喰塗の外壁に腰を板壁とし、屋根は本瓦葺き。

 表門は主屋の南東に取り付き、東側の路地に門扉を開く。一間の腕木門で切妻造り、桟瓦葺き屋根。当家の表門として上質な造りとなっている。

 主屋、座敷は大阪の葛野建築事務所が設計。良材を駆使しており、外観からは分からないが2階に洋室を備えた質の高い住宅で、通り土間の吹き抜け空間と、改造の少ない台所空間も見応えたっぷり。座敷には扇をあしらった欄間に特徴があり、「主屋、座敷とも洗練された和風意匠の近代住宅として質が高い。瀬戸家住宅は北側の街路に接して旧女中部屋及び風呂、文庫蔵、穀蔵、西蔵を並べ、良好な歴史的景観を形成しており、価値が高い」とされている。

写真=国有形文化財に登録される瀬戸家の主屋