チェーンソーで彫刻する田辺市龍神村柳瀬のチェーンソーアーティスト、城所ケイジさん(50)は、7500万年前の中生代白亜紀後期に生息していた史上最大のウミガメといわれる「アーケロン」の制作に取り組んでいる。串本海中公園センター水族館(串本町有田)からの制作依頼で、全長4・5㍍の実物大に仕上げる。完成品は来年1月1日から同水族館で展示される。
 アーケロンは地球の歴史の中で最も大きなウミガメで、日本にも生息していたといわれる。同水族館では「子孫に当たる現在のウミガメたちも絶滅の危機に瀕(ひん)している。アーケロンを実物大の彫刻で復活させ、現代のウミガメの状況を紹介して保全活動につなげたい」と今回のプロジェクトを企画。チェーンソーアートの第一人者でもある城所さんが制作を手がけることになり、ことし4月ごろから材料となる木材を購入するなど準備を始めた。県内産のスギを使用し、甲羅、頭部、足、手など7パーツを制作して組み合わせて完成させる。甲羅の幅1・9㍍、前足の部分は約2・5㍍。最も広い部分となる甲羅には古座町で切り出された樹齢約135年のスギが使われる。
 9月に龍神村東の工房で着工式を行われ、チェーンソーを使って作業を始めた。現在は大まかに形が出来上がった状態で、今後細部の作業に入る。作品はなるべく色付けを少なくし、自然の木目を生かすという。名古屋港水族館(名古屋市)にあるアーケロンの化石の複製品を見学するなど実物の形通りに仕上げるよう励んでいる。
 城所さんは「いままで制作した中でも最大級の作品。ぜひ観賞し、絶滅したアーケロンの大きさや、使用している木の大きさを体感してもらいたい」と話している。
 海中公園センターでは来年1月1日から19年12月29日までの2年間、アーケロンの彫刻を展示するとともに保全活動のパネル展、ウミガメ体験イベントなども行われる。