昨年7月、神奈川県の相模原障害者施設で起きた大量殺人事件は、まだ記憶に新しい。犯人は刃物で19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせたが、その侵入を阻止、あるいは被害をもっと食い止める方法はなかったのか。二度と同じ惨劇を繰り返さないためには、施設職員がもしもの場合にどのように対応すべきなのか、日ごろから確認しておく必要があるのは言うまでもない。
 先日、由良あかつき園で初の不審者対応訓練が行われた。御坊署員が不審者役に扮して建物に侵入し、ナイフを振り回して暴れるのを、夜間の人数の少ない職員でいかに対応するのかを実践。当初の設定では、不審者役がガラスを割って中に侵入する予定だったが、職員はすごむ不審者役の勢いに押され、扉を開けて施設内に入れてしまった。また、不審者役を取り押さえるドタバタの中、不審者が持っているナイフの刃の部分を思わず手づかみ。偽物だったからよかったが、本物のナイフならどうなっていたか、言うまでもない。さらに御坊署へ通報もする予定だったが、できなかった。訓練に参加した職員の感想は「どう対応していいか頭が真っ白になってしまった」「利用者を守るため必死だった」など、不審者役の迫真の演技もあったためか、パニックになっている様子がうかがえた。
 これは、何も恥ずかしいことではない。あくまでもしもの場合の訓練であり、何をどうすればよかったのかなど、いろいろ課題が見えたと思う。大切なのは一過性の訓練にとどまらず、今回分かった課題をクリアしながら、継続していくこと。利用者はもちろん、職員自身もより一層安全に、安心して過ごせる施設になるよう願っている。(吉)