御坊市日高川町組合立の大成中学校(岡本哲司校長、生徒199人)で12日、交通事故の被害者遺族による「命の大切さを学ぶ教室」が開かれた。当時23歳の長男を亡くした滋賀県の田中博司さん(67)、とし子さん(61)夫婦が講演。生徒らは真剣に耳を傾けた。
 田中さん夫婦の長男幹弘さんは平成16年9月、東近江市の国道で友人が運転する車の助手席に同乗中、友人の居眠り運転で道路壁に衝突。命を落とした。2人は生前の写真などが張られた幹弘さんの等身大パネルとともに生徒たちの前に立ち、「命の大切さを伝える~被害者にも加害者にもならないで~」と題してマイクを握った。
 事故以降、日常生活の全てが悲しみに変わった体験を語ったうえで、それでも幹弘さんのために命の大切さを伝えていきたいと活動している現在について話し、博司さんは「親はいつになっても子どものために生きたいと思うもの。幹弘を亡くして本当につらかったが、そのあと命の大切さを広く伝えたいという新たな目標ができた。『幹』が折れても枝は伸びる。夢も希望もなくなり一度は諦めた人生、よかったとは言えないが、幹弘がまったく違う世界を見せてくれた」と気持ちの変化を説明。とし子さんが幹弘さんへの手紙を朗読し、博司さんが「いじめも事件事故も同じ。思いやりが欠けると問題が起きます。相手の気持ち、立場になって考えることが大切。そして、きょうのことを家族に話してください。長い人生いろいろあると思いますが、皆さんの幸せを願っています」と結んだ。