年明け間もない全国紙和歌山県版の記事を読み、中野瑞樹さんという和歌山市出身のフルーツ研究家のことを知った。筆者には近頃一番驚いた記事で、なんと7年以上、果実だけを食べて生きているという 
 テレビ番組でも話題になったとのこと。インターネットで調べるとインタビュー記事等も数多い。それによると「果物は総合食である」と自分の体で確かめるため独自の食生活を実践。単に果物を多く摂るという程度では何か変化があっても他の食材の影響かもしれないので、果実類と塩以外一切口にしないという驚くべき徹底ぶり。塩分はスイカの皮のぬか漬けで摂る。水分も果物からで、夏は主にスイカ、冬はみかんを持って出かけるそうだ
 健康状態は良好。「果物は糖分が多いから太る」とのイメージがあるが逆にスマートになり、肌のきめも細かくなった。もっとも、「あくまでも研究のためであり、十分な準備期間を経てから実行に移したので、決して真似はしないでほしい。日本には豊かな食文化があるのだから楽しんでください」と一般の人には呼びかけている
 当県は梅やみかんをはじめメロンにスイカ、柿、桃等多くの果物を産出するフルーツ王国。果物の人気が上がれば産地は活気づく。しかし中野さんの意図はもっと壮大だった。砂漠の緑化を研究しており、体を張った実験には「果物の需要が増え、園地が増えれば地球の砂漠化に歯止めをかけ、温暖化をも食い止められるかもしれない」との思いがある
 フルーツ王国和歌山は紀伊国屋文左衛門、南方熊楠らを輩出した進取の気性に富む県でもある。驚異の実験に果敢に挑む研究者の姿に、人間の底知れない可能性をも見たようで、果物の味わいのように豊かな気持ちになった。   (里)