「目に青葉、山ほととぎす初がつお」という俳句があるように、この時期の味覚の1つといえばカツオだ。新鮮なうちに刺身にすると、もちもちした食感があり、とてもおいしい。ニンニクやタマネギなどの薬味を加えたたたきでは、刺身とは少し違った味わいがある。
 子どもの頃は父親が魚好きだったため、この時期になると家の食卓によくカツオが上った。価格もいまより安かったし、父親の知り合いの漁師からもおすそ分けがあったようだ。いまはなかなか食卓に上らないので残念なのだが...。
 そのカツオが近年不漁だ。全国的な傾向らしいが、県内の水揚げ量についても平成16年ごろを境に減り始めているのが現状。田辺、すさみ、串本の主要3港の水揚げでみると、26年は過去最少となり、ことしも出足となる3月の漁獲高は低調だ。県水産試験場(串本)によると、「東南アジア諸国などが巻き網漁法で幼魚から親魚まで乱獲しているのが原因の1つと考えられる」という。
 少なくなっているのはカツオだけでない。ウナギもそうだ。昔は庶民の味だったそうだが、近年では個体数が激減しているようで、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定された。高価なウナギに代えて、味が似ているナマズをかば焼きにすることもあるほどだ。マグロも同じ。江戸時代にはトロに当たる部分は捨てられていたという話も聞いたことがあるが、いまでは高級食材となり、なかなか口には入りにくくなってしまった。
 「目に青葉、山ほととぎす初がつお」という句をもじって「ネギ大葉山ほど盛って初がつお」と詠む人もいるそうだが、それも過去の話となってしまう時はそう遠くないかもしれない。(雄)