先日、ニューヨークへ行く機会があったのは前回の小欄でも紹介させてもらったが、街を歩いて感じたことは、美しいということだった。印象的だったのは、ガムバスターと書かれた車が止まっていたこと。ポイ捨てされたガムを除去するチームで、実際に作業しているところを目の当たりにはできなかったが、確かに歩道にガムが吐き出されて黒いしみになっていることは少なかった。きれいな街はそれだけで観光客をもてなす。まちぐるみで環境整備に取り組む、ニューヨークが世界でも人気の観光地である理由が少し分かったような気がした。
 日本ではどうだろうか。車が必須アイテムの田舎ではまちを歩くことは少ないが、それでも地面に目をやると黒ずんだガムのかすは至るとこにある。ガムだけではなく、ゴミや空き缶のポイ捨ても同じ。地域資源をウリに観光客や交流人口の増加を掲げる県や各自治体も、まずは足元に目をやることが必要なのかもしれない。まちをきれいにして観光客を心地よく迎え入れたい、そんな気持ちのある人を増やす、それが観光客増加のスタートラインであろう。
 もう一つ大事なことだと感じたのは、安心感を与えるまちであるかどうかということ。ニューヨークは一人で歩いていても危険を感じる雰囲気はまったくなかった。レストランに入り、何を書いているか全く分からないメニューとにらめっこしていると、店員が分かりやすい単語で教えてくれた。人の優しさは、そのまちの印象をいいものにする。観光振興を含めた地域活性化は、観光資源と人を磨いてこそ初めて成り立つものだとあらためて痛感した。人の魅力は地域の魅力でもあると自覚したい。     (片)