「アメーバのごとく時代に対応して柔軟に変化、進化していきたい」。平成26年9月、御坊市の一流企業である大洋化学の創立60周年記念パーティーに際して上西一永社長があいさつした言葉である。アメーバとは、水中にいる小さな原生動物で、体の形を変えながら動くのが特徴。語源はギリシャ語で、「変化」を意味する。上西社長はこれを引用して会社の発展を誓ったわけだが、この姿勢は、近年の多様化するニーズの中、企業に限らず、町おこしの取り組みや各種イベント、伝統行事など、さまざまなことに通じると思う。
 去る3日、源平時代から続く地元下阿田木神社のお弓神事を取材した。例年、他の担当地区の取材があったため来ることができず、多分この日お弓神事を見たのは数十年ぶり。白装束の氏子たちが矢を射て神意を占い、厄を払う行事。歯を食いしばって弓を引く様子は見ている方も身が引き締まる思いで、厳かな伝統行事の雰囲気を堪能させてもらった。
 ただ、驚いたのは見物人の少なさ。筆者自身、お弓神事に毎年参加していないので偉そうなことは言えないが、子どものころはもっと見物人でにぎわい、たこ焼きなどの露店も出ていた。このままでは伝統行事が廃れるのではないかと心配する。
 筆者が思うに、大人が矢を射るだけでなく、子ども用の弓と矢を作って地元小中学生にも参加してもらうとか、的に弓が当たったら太鼓を鳴らすなど派手な演出をして景品を出すとか、何か神事の形態をアメーバのごとく変化、進化させることも必要なのではないかと思う。伝統的なスタイルを引き継ぐことも大事だが、途絶えてしまっては元も子もないのだから。(吉)