「新しいストレス生活のすすめ」というのが、本年度第4回市民教養講座、放送タレント松尾貴史さんの講演タイトルだった。「新しい」は、普通に考えれば「ストレス生活」にかかる修飾語のようだが、「ストレス」だけにかかる。自分に「新しいストレス」をかける生活をお勧めする、という意味である
 ◆エスカレーターのように、同じ部分に負荷をかけ続けるのは壊れるもと。たまに違うことをするのが心の健康にはいい。海外旅行などに行くと、言葉も通じない、土地勘もない、かかりつけの医者もいない、交通機関にも慣れていない、ストレスだらけで体も頭も疲れるはずなのに、行ってみると「あーよかった」と思える。それは普段と違う「新しいストレス」をかけることで、普段のストレスが緩和できたから
 ◆筆者は鈍感なせいかストレスを自覚しない方で、肩凝りなどもあまり感じない。十数年前にピアスの穴をあけてから、ツボに当たっていたのかどうか、日常的な肩凝りはほとんどなくなった。ところが数カ月に1回、右肩と首がガチガチに固くなり、耳も目も歯も、頭の右半分が全部痛くなることがある。その時ばかりは何をするのもストレスになる。蓄積された目の疲れがいっぺんに出てくるのだと思っていたが、よく考えると、それが出るのは仕事と家事以外にまったく時間を裂けない時のように思う
 
 ◆折りしも芸術の秋、さまざまなコンサートや展示会を取材する機会が多い。どんな発表も準備など苦労を伴うものと思われるが、皆さん大変さを口にしながらも生き生きとした表情で、充実感が伝わってくる。非日常的な「新しいストレス」は、反復から生まれる悪いストレスとは違って疲れた心のカンフル剤になってくれるようだ。  (里)