日高川町皆瀬で生まれ育ち、秋祭りと言えば、子どものころ下阿田木神社の奉納相撲に参加したぐらい。他の祭りのように四ツ太鼓や屋台、獅子舞などはない。いわゆる祭りのにぎわいや楽しさなどをあまり実感したことはなかったが、記者になってからは、取材を通して多くの祭りを見て、「活気や迫力があるものだな」と感じた。
 ただ、近年はどこの祭りも、人口減や少子化に伴い、四ツ太鼓などの担ぎ手も減ってきている。そのため、女子が四ツ太鼓の乗り子になったり、幟を差したりすることも。女人禁制の神事に賛否両論の声もあるが、筆者は男女平等のこのご時世、女子の参加も別にいいのではないかと思う。何よりも伝統行事を廃れさせるのではなく、継承、保護していくことの方が大切である。
 そんな地域の祭りの継承へ、日高町の中志賀若中が絵幟を新調し、半世紀ぶりに幟差しを復活させることになった。同町は日高地方で唯一、若者世帯を中心に人口が増加しており、「祭りを盛り上げて、次世代の子どもたちにも引き継ごう」との考え。かつて幟差しはけんかの火種となって以来、途絶えてしまったというが、長い年月が経過して、もはや〝時効〟と言ってもいいだろう。昔の因縁にこだわらず、やはり伝統行事の継承、保護へ前に進みだすことが大切で、中志賀若中の一歩が、地域での歴史的な意義を持つと思う。
 祭りは地域の元気のバロメーターとよく言われる。祭りに活気があることは、若者が多く、にぎわいのあるまちの証。そういった意味で、いま言われている地方創生の一つのキーワードになるものでもあり、ことしも一層にぎわうことを期待している。(吉)