県畜産試験場養鶏研究所(日高川町)は、飼料に脱塩濃縮梅酢「紀州梅そだち」を加えて育てた肉用鶏「紀州うめどり」に含まれる鶏肉独特の臭みが、一般的なブロイラーより少ないことを科学的に証明した。成分や食味の調査で解明し、同研究所では「今後は臭みが少ないという特性を販売促進に生かしていきたい」と話している。
 紀州うめどりは県内で120万羽が生産されているブランド鶏。鶏肉臭は、鶏肉中に多く含まれる脂肪中のリノール酸が酸化されることで生じる臭気成分のデカジエナールが原因とされる。紀州うめどりは以前から「不快な臭いが少ない」といわれていたが、「紀州梅そだち」による鶏肉臭の減少効果を証明しようと同研究所が科学的に取り組んだ。
 紀州うめどりと一般のブロイラーを使った鶏肉スープを比較する食味検査を実施。パネリスト10人がスープを飲む前と飲んだ後に感じる香りを調べた結果、いずれも紀州うめどりの方が「鶏肉臭さが少ない」という評価だった。さらにそれぞれのデカジエナールの発生量を調べたところ、紀州うめどりは一般のブロイラーより約50%少ないことが確認された。
 このほか、温風と水蒸気を使ったスチームコンベクションオーブンによる真空調理法でむね肉を調理。パネリスト16人が食味検査を実施したところ、紀州うめどりが一般のブロイラーより「臭い」「歯ごたえ」「味」「総合評価」でいずれも好評価だった。同研究所は「『紀州梅そだち』は十分に現場活用が可能。鶏肉独特の臭みが少なくなるという特性を生かして差別化を図りたい。冷凍むね肉は脂が少なくぱさぱさ感があるとして消費が低迷しているが、紀州うめどりの魅力ある調理法を提示することもできた」と話している。