福島第一原発事故後にできた原発の運転期間を制限する制度に基づき、4つの電力会社の原発5基が廃炉となることが決まった。いずれも出力は小さく、運転期間を延長するには補強工事に巨額の費用がかかり、法的には20年の延長も可能だが、各社とも採算がとれないとの判断らしい。
 政府は原発依存度を可能な限り低減させるとしながら、原発は「重要なベース電源」とし、安全基準をクリアした原発は運転を再開する方針。鹿児島の川内原発は今夏にも再稼働の見通しで、関電は美浜原発1・2号機の廃炉決定と同時に、同原発3号機と高浜原発1・2号機の運転延長のための安全審査を申請した。
 日本はこれらの軽水炉型原発だけでなく、ウラン混合酸化物とプルトニウムのMOX燃料を使う高速増殖炉の開発を進めている。福井にある原型炉は事故や不正が続き、今月末を目標としていた運転再開準備の停止命令解除も、機器の点検漏れ問題で大幅にずれ込む見通しとなった。
 高速増殖炉は、軽水炉では使えないウラン238からプルトニウムを生みだし、燃料を増やしながら発電できるという。欧米諸国がこぞって研究・開発を進めていたが、事故のリスクや経済性を理由に米、英、仏などが撤退していると聞く。
 高速増殖炉を狙ったテロ事件を描く東野圭吾の『天空の蜂』では、外国の研究撤退の理由は「多分に核不拡散政策など政治的な背景、新たな油田の発見といった事情もある」との原子力研究者の見方もある。  小説が出版された20年前にはテロなど荒唐無稽に映ったかもしれないが、原発賛否の議論はいまこそ輝きを放つ。福島の事故を経たいまの日本人はどう受け止めるか。秋には映画も公開される。 (静)