日高川町玄子、浄土宗円通寺の豊嶋英雄住職(60)は、毎年恒例の寒行を行っている。 毎年寒の入りの1月上旬から2月2日まで、毎晩ひたすら念仏を唱えながら川辺地区を中心に巡る。雨や雪の日でも休むことはない。この寒行を紙面に掲載させていただいているが、取材をし始めたのは6年前から。ことしは、例年に比べて気候が暖かく、住職は「修行をしている気がしない。もっと寒くなってほしい」と言うが、筆者にとっては寒いのなんの。先日取材したが、冷たい風が吹きつけるなか、凍えながら模様を写真に収めた。
 ことしは気候こそ恵まれているが、これまで取材したことしを含め7年間の話だけでも本当に厳しい修行だとつくづく思う。冷たい雨やみぞれに打たれて濡れネズミのようになるのはほぼ毎年のこと。網代笠に数㌢もの雪が積もる日もある。気候面だけでなく、突風で飛ばされた網代笠を拾いに走り道路からまくれ落ちそうになったり、段差に気付かずに前のめりに転倒し、凍てつく寒さのなかしばらく身動きがとれなくなったことも。昨年は蛇尾地内の真っ暗闇の夜道で巨大イノシシと遭遇、後ろをついてこられる危険な目に遭った。そんな住職に出会った町民は手を合わせ、「頑張って」などと声をかけ、待っている人もいれば、走って追いかけてきて浄財を預け、願いをささげる人もいる。何とも温かい。「終わりが近づくにつれて、もっと長く修行を続けたい、お念仏を唱えていたいという気持ちになる」と豊嶋住職。27歳のときからはじめ、ことしで34年目。通算900回以上を数え、再来年には1000回。厳しく危険な修行だが、何よりご無事で、体には気をつけて1000回に達することを心から願っている。 (昌)