昨年1年間、御坊署管内の交通死者は1人で、統計を取り始めた昭和31年以降最少となった。筆者が警察回りの記者となった15年ほど前は年間10人以上が犠牲になっていたことを考えると、重大事故はもちろん、人身事故自体が年々減少しているのを感じる。なかでも一昔前のように無謀運転による事故はめっきり減った。ドライバーの安全意識が高まっている証拠だろう。全国の死者数は4113人で、20年前の1万684人に比べて半減以下。取り締まりや罰則の強化と地道な安全教育が効果を表しているといえる。
 交通ではないが、冬場に多い入浴時の事故死者は、1万4000人(10年ほど前のデータ)で、交通死者の3倍以上だ。高齢化社会が進んだいまはさらに増えていると推計されている。脱衣場の室温の低さや入浴後の血圧の変動などが起因して溺水の原因となる意識障害や湯のぼせが指摘されている。ただ、夏の熱中症に比べるとテレビや新聞での注意喚起も薄く、認識不足や「自分は大丈夫」という油断もあるのか、死者は減っていない。積極的な啓発活動が必要だろう。
 もっと大きな数字がある。昨年の全国の自殺者数は、警察庁の速報値で2万5374人だった。行政や民間団体の熱心な活動で5年連続で減少しているが、まだ交通死者の5倍以上。予防対策は重要な課題だ。サインに気づくのは簡単ではない。身近な人には心配をかけまいとすれば家族ですら見抜けないこともあるだろう。職場や普段から接している人のわずかな変化に敏感になり、声をかけるおせっかいさを多くの人が持とう。交通死のように10年、20年後には「本当に減った」と実感できるように。
       (片)