日高川町玄子、浄土宗法性山円通寺の豊嶋英雄住職(60)は、毎年恒例の寒行を行っている。ことしで34年目。
 毎年寒の入りの6日(5日の年もある)から2月2日まで雨や雪など悪天候の夜も休むことなく、念仏を唱えながら川辺地区を中心に回っている。ことしは例年に比べて気候が暖かく、これまでのように冷たい雨やみぞれに打たれることも、網代笠の上に雪が積もることもない。あまりの強風で歩きにくく、念仏の声が出にくかったという日もあったが、「寒さで手がかじかんで、足の感覚がなくなるほどの日がないので、修行をしている気がしない。厳しさを求めてしまうのでもっと寒くなってほしい」と話す。23日の夜は、網代笠に墨染めの衣、手は手甲(てっこう)、足には脚絆(きゃはん)という格好でひたすら「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えながら、中津川、千津川、土生方面を巡り、日高地方出身の江戸時代の念仏僧、徳本上人の月命日に当たることから徳本上人の苦行跡地、千津川の尊光寺前で祈りをささげた。出会った住民からの浄財は町の社会福祉協議会などに寄付、昨年は室川峠の地蔵の修繕費の一部に充てた。
 修行は折り返しを過ぎ、「ことしは日中の法務が忙しく、日が過ぎるのが早い。毎年のことですが、終わりが近づくにつれてもっと長く修行を続けたい、お念仏を唱えていたいという気持ちになってきます」と笑う。27歳のときから始めて通算900回以上、再来年には1000回に到達する。「これからも健康に注意しながら続けていきたい」と話している。