先日、御坊市内で初となる国の登録有形文化財に御坊の町屋「堀河屋又兵衛住宅」と薗のしょうゆ醸造「堀河屋野村」が登録された。国の重要文化財や自治体の文化財指定などの制度はよく聞くが、登録有形文化財は当地方であまりなじみがない。
 そもそも昭和40年ごろから古い民家や洋風建築が重要文化財などの指定を受けてきた。そんな中、近年急激に消滅しつつある建造物の保護に当たり、緩やかな規制の下で幅広く保護の網をかけようと創設されたのが登録有形文化財制度。原則、外観の維持が義務付けられるが、申請すればある程度改修の融通は利くようで、家主にとっても大きな負担にはならないようだ。
 御坊市内では関係機関が寺内町観光を推進しており、心配されるのは〝お宝〟とも言える建物が、都市化や生活形態の変化などで取り壊されてしまうこと。地元県議も古い建物の保存へ文化財登録を提案しており、今回の2件がスタートラインと言えそう。
 全国的な登録有形文化財と言えば京都府の「南座」や新潟県の「彌彦神社本殿・拝殿」、高知県の「畠中家住宅」などで、確かに世界遺産や重要文化財に比べるとインパクトは少ない。しかし、市内にはまだ登録できそうな建物がたくさんあるようで、登録が増えることで地域全体のまちなみ保存の機運アップにつながると思う。ただ、登録有形文化財は、改修の規制が緩い分、重要文化財に比べると補助金や固定資産税減免のメリットが少ない。今回の2件の家主のように志ある人ならいいが、この辺が登録を増やしていくネックになるのでは? ならば地元行政が独自に補完する新しい制度でも作れないものだろうか。   (吉)