一般社団法人全国防災共助協会はスマートフォンの「AR(拡張現実)」と呼ばれるアプリを活用した次世代型の防災対策に取り組んでおり、8日には御坊商工会館で日高地方の自治体などを対象にした初の説明会を開いた。それによると、このシステムを使えば①日ごろの防災啓発や防災グッズの備蓄促進②災害時の避難場所への誘導③災害後の安否情報確認――が可能。さらに自治体などが導入する場合の費用負担がゼロというのが特徴となっている。
 ARは英語のオーグメンテッド・リアリティー(Augmented Reality)の略。スマートフォンのカメラで写した現実世界の映像に文字やイラスト、動画などのデジタル情報を重ね合わせることができる先端技術で、さまざまな情報を視覚的に表示することができるため、広告分野を中心に活用が進んでいる。そんな中、同協会ではARを巨大地震などの防災対策に活用。システムの開発はウィズ・アイティ・ジャパン㈱(本社=滋賀県大津市)が行っており、ARアプリの「みたチョ」をダウンロードして利用する。利用方法の1点目をみると、まず各自治体はオリジナル防災ステッカーやリーフレットを作製し、全住民や企業、商店街、駅などに配布。住民らは「みたチョ」を利用してステッカーを見れば防災情報の動画などを見ることができる。さらにその際には、スマホの所有者と自治体にポイントがたまる仕組み。ポイントが一定数貯まれば備蓄用食料など防災グッズと交換できるのがみそとなっている。
 2点目は「みたチョ」を起動させてカメラで周辺の風景を写すと、GPSを利用して避難所の方角や距離が重ね合わせて表示される。地震などの災害がいつどこで発生するのか分からない中、知らない地域でも避難場所へ誘導してくれる心強い味方となる。3点目は、災害時に利用者の安否情報を発信。サーバーに蓄積された情報を確認することができる。
 導入するかどうかは各自治体などの判断に委ねられ、導入する場合は同協会と協定を締結する。ステッカー製作や運営にかかる費用が全て無料という背景には、「みたチョ」でステッカーを見た場合に流れるスポンサー企業の広告収入を基に同協会が全額を負担するという流れがある。
 同様の取り組みは、スマホが全国的に普及している中で新しい防災の取り組みとして注目されており、大阪府泉佐野市が全国に先駆けてことし1月から導入。他の自治体にもその動きが広がっており、大手紙でも大きなニュースで取り扱われている。本県内では湯浅町が準備中となっているが、まだまだ浸透していないということもあって、同協会からの依頼を受けて御坊市薗、防災商品取扱店㈱きのくに防災(細川健次郎代表)が推進中。説明会には日高地方の6市町(みなべ町除く)の職員ら20人が参加。同協会の職員からシステムについて詳細な説明があった。御坊市の担当課は「スマホということで若い人には取り組みやすく、費用がかからないというのも魅力。導入を考えていってもいいのではないか」と話していた。今後はみなべ町や有田地方、新宮などでも説明会を開いていく。