西アフリカを中心に感染が拡大しているエボラ出血熱。発症すれば致死率は50%を超え、死者数は1400人以上となり、緊急事態宣言を出したWHO(世界保健機構)の関係者までもが感染した。
 WHOの関係者はドイツの感染症病院に収容され、本人は回復の可能性があり、一般市民への拡大の可能性はないという。しかし、実際には流行国で患者の治療に当たる医療従事者が200人以上感染し、その半数以上が死亡しているという。
 ダスティン・ホフマン主演の映画『アウトブレイク』が公開されたのが1995年。宇宙服のような防護服を着て未知のウイルスに立ち向かったあの衝撃的な映像から19年が過ぎ、人類はエボラ熱に打ち勝つことができないまま、映画のようなパニックに直面している。
 有効な治療薬がなく、WHOは条件付きで効果が期待できそうな未承認薬の患者への投与を認め、アメリカで開発された「ZMapp」が3人に投与された。2人は回復、もう1人もいったん回復の兆しをみせながら、再び容体が悪化して亡くなった。
 そこで、期待が高まっているのがわれらが日本の富士フイルムグループが開発した抗インフルエンザ薬「アビガン」。エボラウイルスに感染させたマウスでは一定の効果が確認されており、政府も同グループとともに、WHOや各国から要請があれば、提供する考えを示している。
 「危ないから行くな」といわれながら、自ら危険地帯に入り、イスラム過激派に拘束された日本人はともかく。人の命を守るため、人類を危機から救うため、国境を越えて集まった医師、看護師がウイルスを相手に奮闘している。野口英世のような捨て身の研究者魂に心から敬意を表したい。   (静)