初場所は横綱白鵬の優勝で幕を閉じた。初日からまったくの隙のなさで白星を重ね、本割は千秋楽に土をつけられたが、大関鶴竜との優勝決定戦はがっちり組みとめての寄り切り。圧倒的な存在感で一人横綱の務めを果たした。
 2人の横綱と大関の1人がモンゴル、関脇琴欧州はブルガリア。平幕力士も33人のうち外国人は11人もいて、土俵上のTPPは順調に国籍が増えつつあり、情けないが、日本人力士の影の薄さは否めない。ここは張本氏にならって、厳しく「喝」を入れておこう。
 そんななか、連日、満員の館内を沸かせた日本人がいた。その名は遠藤。昨年春の初土俵から史上最速、所要3場所で新入幕を果たし、出世が早すぎてまだまげが結えず、四股名もない。仕切りの際、天井に向け180度開脚するしこの美しさは相撲ファンならずとも魅了され、なによりしなやかで切れのある四つ相撲は、白鵬以来の大器を予感させる。
 昨年秋は途中休場ながら9勝、九州は故障が癒えず初の負け越しとなったが、今場所は優勝争いもあと一歩、堂々の11勝で初の敢闘賞を受賞。次の大阪では大関、横綱との対戦もあり、その強さがどこまで通用するのか、早くも春が待ちきれない。
 場所後、残念ながら御坊出身の木村山が引退を発表したが、3年ぶりの一本背負いを決めた里山、顔の怖さに磨きがかかった松鳳山、帰り入幕で見事二けたを挙げた千代鳳ら、日本人の小兵力士が「あっぱれ」な奮闘ぶりをみせてくれた。
 遠藤を筆頭に互いに切磋琢磨しながら、臥牙丸(グルジア)、魁聖(ブラジル)、碧山(ブルガリア)ら巨漢の外国人をなぎ倒し、モンゴルの両横綱も土俵にたたきつけ、相撲ファンを楽しませてもらいたい。  (静)