現在、選択制の高校の日本史を必修化とする方向で政府の検討が進んでいる。「海外で活躍する日本人が増えるなか、自国の歴史を十分に学び、理解している人材を育成すべき」との判断から、今夏にも文科相が中教審に諮問し、早ければ5年後から必修科目になるという。すでに必修化されている世界史を学ぶ前に、自国の歴史を正しく理解する必要がある。
 そんな記事を読みながら、県立高校3年の息子に日本史の教科書を見せてもらった。たしかに、憲法学者の竹田恒泰氏が嘆く通り、教科書は考古学的な石器時代の遺跡の紹介から始まり、親の自分も高校生のころ、疑いもなく日本史として習った中国の歴史書「魏志倭人伝」の邪馬台国などの記述から、日本の国が形づくられる。
 最初に登場する天皇は5世紀後半のワカタケル大王、雄略天皇。西暦紀元前660年に即位したといわれる初代神武天皇からかぞえて21代目で、非科学的な神話は歴史学に値しないのか、神武天皇即位から始まる日本国の成り立ちはざっくり削られている。これは明らかに戦後、GHQが進めたWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)による思想改造の一環。竹田氏は、GHQのじつに巧妙な長期的策略だと指摘する。
 重要なのは、ペリー来航から急速に近代化を成し遂げた明治維新までの流れで、日清、日露を経て、日本がなぜ対中、対米戦争へと突き進んだのか。いまの政治、外交に直結する近現代史が、授業ではお茶漬けをかき込むように、駆け足で流されている状況はいまも変わっていない。
 現実、日本がアメリカと戦争をしたことすら知らない大学生もいるという。日本史の必修化はもちろん、教科書の中身の見直しも必要である。 (静)