「政治に必要なのは十分な食糧、十分な軍備、そして住民からの信用」。以前にこの欄で少し触れたこともあるが、こう説いたのは紀元前約500年に生きた中国の思想家、孔子である。さらに孔子は弟子の子貢に「その中で最も必要なものは何か」と問われ、「国民からの信用である」と答えたという。
 それから2000年が経過したいまの時代も同じである。東京都知事だった猪瀬直樹氏が医療法人「徳洲会」から5000万円を受け取ったとして退任した。説明のつかない資金の授与があり、住民の代表でもある議員から退任が突きつけられた。つまり民信を失ったといえる。このような事例は今回に限らず山ほどあるが、住民の信用が得られないとトップでも辞職に追いやられるという一例だろう。
 みなべ町議会で去る20日に議案審議が行われ、2議案が否決となった。職員の再任用に関する条例改正と国民宿舎紀州路みなべの指定管理者に関する案件である。再任用については公的年金の受給年齢が段階的に伸びるのに伴って無給期間となる退職職員を救済するために再雇用するという制度で、日高郡の6町が協議を重ねて12月議会で足並みをそろえて提出した議案だった。他5町では美浜町が委員会付託となったが、4町は原案通り可決した。
 みなべ町議会では議員から「旧南部町と旧南部川村が合併して9年になるが、この間に職員の不祥事が相次いだ。住民からは『役場職員は気楽でいい。自分のことだけか』という声も聞く」という意味合いの発言もあった。議員は住民の代弁者といわれることもある。行政に対する住民の信用が今回の否決に少なからず影響したのではなかろうか。(雄)