先月28日に県内一斉で行われた地震の津波避難訓練で、緊急避難ビルとなっている薗のNTT御坊別館ビルでの訓練を取材した。東正、第一春日、春和の3町内会から100人が参加。地震発生は午前9時の想定で、筆者が時計を見ていると、避難者の先頭がビルの下に到着したのが25分後。さらに4階に着いたのは27分後。津波が30分足らずで襲来すると言われる中、先頭が到着するのもぎりぎり。訓練から判断すると、後方の避難者は津波にのまれてしまう。
 確かに地震発生から家を出るまでの時間を短くしたり、もっと早足で歩いたりすれば、避難の時間は短縮できるだろう。しかし、どこまで通用するのか。高齢者が多い中で、訓練ではビル4階までの急な階段を上るのが大変で、「逃げ道は確認できたからもういいわ」と、途中で引き返す参加者もいたぐらい。また、階段の幅は結構広いが、実際の津波避難では慌てふためいて混雑し、ケガでもしないかと、心配する。
 NTT御坊別館ビルを避難所として否定しているわけではない。いざという時、緊急に逃げざるを得ない人は、活用すればいい。ただ、緊急避難ビルと言っても、あまりにも時間的に余裕がないと、逆にいろいろなトラブルが起きそうな気がする。去る7日には名新地区が市に対して各町内会に1基の避難ビルを要望していたが、なるほど、津波被害者ゼロを目指すなら、それぐらい身近な場所に避難ビルの整備が必要かもしれない。名新地区の中には「既設の避難場所へいく訓練を試してみたが、逃げ切るのが難しい」と嘆く人がおり、危機意識と訓練のモチベーション維持の難しさを指摘する声もある。行政はこれらの声をしっかり受け止めてほしい。  (吉)