県立うめ研究所(みなべ町東本庄)は、梅酒製造で原料の果実の状態によって香りや機能性が変化することを解明し、研究報告書にまとめた。大江孝明主査研究員(39)らが中心となって取り組み、樹体の外側の日光が当たる果実の方が内側よりも、フルーティーな香り成分や機能性の成分が高いことなどを突き止めた。20度程度に追熟させることでもよりフルーティーになることも分かった。
 大江主査研究員は過去約10年間の研究データを基にまとめた。ポリフェノールなど機能性成分の含有量は梅の木の外側と内側の果実では異なり、日光のよく当たる外側の方が多いことを解明。光の中でも、特に紫外線が影響しているとみられる。酸っぱさの原因となる成分で疲労回復に効果があるといわれるクエン酸などは、内側の果実でも収穫を約1週間程度遅らせることで外側の果実と同程度になるという。収穫した梅を追熟させて梅酒に加工した場合、フルーティーな香りを出す成分が増加することも解明。果実が黄熟したり一定の柔らかさになった方がその成分は高まることも突き止め、梅酒製造の際に参考とする数値化も行った。大江主査は「梅酒に使用する原料の果実の状態によって機能性や香りが変化する。製造の参考にしてもらいたい」と話している。研究成果は報告書「和歌山県農林水産試験研究機関特別研究報告第2号 機能性成分と香りに優れた梅酒製造のためのウメ果実の栽培・追熟方法に関する研究」(A4判、100㌻)にまとめられている。
 梅酒の人気は年々高まっており、国内の出荷量では平成10年が2万2275㌔㍑だったが、昨年は1.7倍の3万8235㌔㍑に伸びた。みなべ町では20年に少量でも梅酒を製造することができる「紀州みなべ梅酒特区」に認定され、青梅、梅干しに次ぐ第三のブランド化を目指して取り組んでいる。