先月に広島県呉市で起きた死体遺棄事件。若者7人が逮捕された。犯行に至るまでの連絡手段としてスマートフォンの通信アプリ・LINE(ライン)が使われ、「人間じゃない。死ね」「殺したるわい」「おー来いや」などと書き込まれたという。また、殺された少女らと面識がなかったが、ラインを通じて知り合い、犯行に及んだ容疑者もいた。顔も知らずに憎しみがなかった被害者に対して殺害するほどの暴行を加えたことはどう理解したらいいのか。
 生まれた時からインターネットが空気や水のように当たり前の環境として存在していた世代をデジタルネイティブというらしい。ネットの普及でもちろん人間の生活は便利になった。しかし、顔も知らない人同士が筆跡もない短い文面だけで意思の疎通を行うのは、ある意味異常な世界。人間が追求した便利さの代償として、今回の事件が発生してしまったのかもしれない。
 先日、みなべ町の上南部中学校で職員研修会が開かれた。まずは教職員がインターネットの世界を理解しようと、NPO法人情報セキュリティ研究所情報モラル講師の舘小百合さんを招いて学習した。インターネットの危険性などが説明され、「子どもに携帯電話を使わせる前には与える大人が十分に機能等を理解し、設定などをきちんとしておく必要がある」と訴えた。
 筆者の息子も広島の事件に関わった少女らと同じ16歳。高校入学と同時にスマートフォンを買い与えたが、どんな使い方をしているかまったく知らない。「もう高校生になったのだから」ではなく、「まだ高校生の危険な年頃だから」といま一度、子どもに対して目を向ける必要がある。 (雄)