市内寺内町のシンボルといえる横町の 「中川家の邸宅」 は、 大阪在住の所有者の意向で取り壊しの可能性があったが、 古い町並み保存の趣旨に賛同した県福祉事業団が購入した。 同事業団は建物の改修工事を行って、 障害者の就労訓練の場を兼ねた古民家レストランなどとして平成25年度中にオープンする計画で、 寺内町観光の推進に一役買ってくれそうだ。
 中川家は敷地面積1013平方㍍、 延べ床面積487平方㍍の木造瓦ぶき1部2階建てで、 市内最大の住宅。 昭和10年、 当時1000円で一般住宅が建てられた時代に10万円の巨費と5年もの工期をかけて建築され、 「日高御殿」 と称されたほど。 しかし、 ここ30年以上空き家だったこともあって、 所有者としては管理が困難となってきたため、 更地にしようと考えていた。 これを知った市内有志の御坊まちづくり委員会 (野村義夫会長) は、 古い町並みを保存させようと、 所有者から承諾を得て昨年2月から購入希望者を探していた。
 県福祉事業団はすでに所有者と売買契約を締結済み。 今後の改修工事の詳細な日程は決まっていないが、 1階を手打ちそばなど自然食品を提供する古民家レストラン、 2階を障害者の文化活動の場となるアートギャラリー、 展示即売コーナー、 作品作り体験コーナーにする計画。 定員20人の障害者多機能型事業所としての役割も兼ねており、 障害者が接客、 販売に携わることで就労訓練の場とする。
 同事業団は県立の社会福祉施設を受託運営するため、 昭和40年8月に設立された社会福祉法人。 平成23年4月に、 県から県立施設の移譲を受け、 現在は事業団が独自の運営を行っている。 中川家購入に際し、 「建物の老朽化が進んでおり、 いまの外観を生かして改修工事するには予想以上の費用が見込まれるが、 本年度中に何とかオープンできれば」 と話している。