基調講演を行うリサ・ドウマエ氏

 美浜町三尾地区にルーツを持つ日系カナダ人がどのような経験をしてきたのか、日本とカナダの研究チームが協力して調査してきたことを報告する「『フロム ミオ』:三尾科研パブリック・ヒストリー国際シンポジウム」が11日、同町の旧三尾小学校で開かれ、日加の研究者らが取り組みを発表。研究者のほか、日系カナダ人や地域住民らが参加し、成果を共有するとともに交流を深めた。

 カナダ移民研究者らによる「科学研究費助成事業基盤研究(B)21H03712出移民史を通じた次世代育成のための地域密着型パブリック・ヒストリーの構築」(科研)が主催し、カナダ・ミュージアムを拠点に行っている「フロム・ミオ・プロジェクト」「Past Wrongs Future Choices(過去の過ち、未来の選択)」という2つの国際共同研究について報告。初めに京都外国語大学の河上幸子研究代表者、共催するカナダ・ミュージアムの三尾たかえ館長、地元の籔内美和子町長、来賓の在名古屋カナダ領事館のデイヴィッド・パデュー領事らがあいさつした。

 基調講演では三尾出身の祖父を持つカナダ・ノースアイランドカレッジのリサ・ドウマエ氏が「『断片を集めて完全になる―三尾にルーツをもつカナダ人の視点』」と題し、今年2月にスティーブストンで三尾周辺地域出身の祖先を持つ日系カナダ人約50人を対象に行った調査結果を基に発表。日系カナダ人は第二次大戦中、敵国となった日本に出自を持つがゆえに財産没収や強制収容といった過酷な経験をしており、「三尾は祖先とのつながりの出発点。三尾を訪ね、ルーツを知ることは強さ、癒やしを与えれくれるという。三尾の子孫である、日系カナダ人は、ルーツを知りたい、訪れたいと思っています。この海はカナダと三尾を分かつものではなく、つなぐ架け橋。この大切なつながりを今後も育んでいきたい」と語った。