県は28日、 南海トラフの巨大地震と東海・東南海・南海の3連動地震の新たな津波浸水想定を公表した。 東日本大震災と昨年8月に内閣府が発表した南海トラフ巨大地震による津波高等の被害想定を受け、 県地震・津波被害想定検討委員会が議論を重ねて作成。 今後、 この2種類の浸水想定を基に、 沿岸部の各市町が独自のハザードマップ等の作成作業をスタートさせる。
 検討委員会は河田惠昭関西大社会安全研究センター長ら防災、 津波防災工学、 地盤工学などの専門家6人で構成され、 昨年6月から4回の会議を開いて新たな想定を検討した。 千年~万年に1回発生するかどうかの南海トラフ巨大地震は、 発生した場合の被害が甚大、 対策も困難なため、 「何としても逃げ切る」 ための避難訓練や防災教育、 自主防災組織の設立などソフト対策を中心とした検討を進めるための想定。 3連動地震については、 ソフト面だけでなく避難路や高速道路の整備、 堤防・護岸整備などハード面の対策も進める基準として想定した。
 それぞれの想定の地震の規模は、 3連動がマグニチュード8.7、 南海トラフが9.1で、 いずれも県独自のより詳細な地形・海底のデータを基に津波高や浸水域を計算。 その結果、 最大津波高は3連動が5~10㍍、 南海トラフが8~19㍍となり、 由良町、 美浜町など4町は南海トラフの最大津波高が1㍍低くなった。   
 平均浸水深の想定では、 川を通じて津波が押し寄せることも予想されることから、 海に面していない日高川町と古座川町も想定。 日高川町は3連動の平均浸水深の想定がなく、 南海トラフについては御坊市との境界付近が日高川からの越流により浸水するとされ、 平均で30㌢の浸水深になると予測されている。
 主要公共施設の浸水予測をみると、 日高地方は由良町と印南町の役場が3連動、 南海トラフともに浸水し、 御坊市役所と美浜町、 みなべ町の役場は南海トラフで浸水。 日高町役場と日高川町役場はいずれの地震でも浸水は予測されていない。 御坊署は南海トラフで30㌢から1㍍、 災害拠点病院の日高病院と災害支援病院の和歌山病院はともに、 南海トラフで3~5㍍の浸水となっている。
 各市町は今後、 独自の浸水予測図を作成するが、 マップは2枚か1枚か、 どのような形になるのかまだ決まっていない。 美浜町防災企画課は 「住民の命を守るという最大の目標からすれば、 やはり最悪のケースの南海トラフの想定を基本とせざるを得ないのでは。 そのうえで、 近い将来起こるといわれている現実的な3連動地震の想定を、 どのように啓発に生かしていくかが課題」 とし、 御坊市生活安全・防災対策室は 「今回の発表を受けてとくに見直しや追加する部分はない。 県や他の市町と情報を交換し、 住民の意見も十分聞きながら進めていきたい」と話している。