素人の女性3人がステージに上がって、「腹立つや~」と右足で力強くステージを蹴り込んで「堪忍袋の緒が切れる」様子を表現。一方、男性2人も目を隠して「エーン」と大泣き。ユーモアたっぷりの寸劇で、約500人の観衆が爆笑した。封建時代、女性は耐えて忍ぶ、男性は人前で涙を見せてはならないたくましい存在で、そんな時代に始まった狂言。滑稽さ重視の喜劇的要素が強く、現在のコントに近いという。
 市民文化会館で20日、平成24年度市民教養講座特別公演、能楽師・和泉流狂言方14世野村又三郎さんによる「狂言鑑賞会」が開かれた。前述の男女5人の寸劇は、狂言についての解説コーナー「狂言解体新書」でのことであるが、滑稽さ重視という大前提に、時間経過や心の中の言葉の表現方法など鑑賞の仕方が紹介された。筆者も教わった基本知識を持った上で、観客同様に『禰宜山伏(ねぎやまぶし)』の鑑賞にチャレンジ。大黒天を相手に禰宜と山伏が祈祷勝負をする内容だが、野村さん扮する山伏の強引さと、幼い子どもの大黒天の興味のなさがとても滑稽で、狂言を知らなかった筆者でも十分に楽しめ、写真を撮るのを忘れて大笑いしてしまった。
 鑑賞会で野村さんが会場に尋ねたところ、古典芸能を生で見たことがないという人が大半を占めた。分かりづらいという印象なども影響しているようで、その点、今回の解体新書はとてもいい企画だったと思う。少しの知識でも十分に楽しめる古典芸能。御坊・日高は、道成寺もので知られる古典芸能のメッカ、道成寺のお膝元。能や歌舞伎、文楽、日本舞踊などさまざまな古典芸能に親しんでいただきたいが、狂言も本当に面白いのでぜひ鑑賞を。(昌)