無駄な出張や接待を減らし、会議や文書の簡素化を進め、蔓延する汚職の摘発にも乗り出した。中国の習近平総書記の動きを伝える日本の新聞。就任後初の地方視察で鄧小平の像に献花、改革開放路線の継承をアピールし、他方、大陸間弾道ミサイルの試射を行うなど、対米軍事力の強化も進めている。
 1989年4月、胡耀邦元総書記が急死した。チベットの惨状に涙を流して謝罪、山崎豊子の『大地の子』の取材に全面協力するなど、閉鎖的な政府の体質を改善しようとしていた矢先。内部の反発により失脚したのちの死だったが、これを機に、独裁政治に不満を募らせていた学生たちが立ち上がった。
 6月4日、北京の天安門広場を埋め尽くした人民に、鄧小平は軍を投入、無差別発砲で鎮圧に乗り出した。党への信頼は地に堕ち、西側の制裁で経済が急激に悪化。事件の真相は闇に葬られ、再度復活した鄧小平が南巡講和で市場経済の導入を宣言した。その後の表面的な経済発展は見ての通りだが、旧態依然の独裁政治で汚職と腐敗は社会の骨の髄まで浸潤し、人民は植えつけられた「反日」で健全な愛国心、良心が育まれず、かつて、命がけで民主化のために闘った学生でさえ、腐りきった国の中で道徳心と良識を失ったという。
 習総書記はこのような現状の継続を「確固不動だ」といいきる。このままでは当然、第3次天安門事件の気運が高まり、党への批判をかわすために日本への軍事行動を起こすという指摘も少なくない。日本の市町村の行革より中身のないポーズをとりながら、食指は露骨に台湾から尖閣、沖縄へと伸びつつある。日本人はいま、祖国を守るための選択を迫られている。   (静)