「視覚障害者同士が待ち合わせするときは、どのようにすると思いますか」。先日、みなべ町で開かれた身体障害者福祉大会の記念講演で、講師の元車椅子バスケ日本代表総監督・髙橋明さんの問いかけに、全く想像がつかなかった。「△△駅の改札を出て左へ10㍍ほどの所で、ときおり杖や鈴を鳴らして」と相手に告げることで、出会うことができるのが答えの一例だったが、知っている人はおろか、どのように待ち合わすのか考えたことすらない人がほとんどではないだろうか。健常者も障害者も互いを理解し合うためには、相手のことを考える想像力が必要だと強調しておられた。想像力とは相手に関心を持って生まれる、思いやりや気配りでもあろう。
 講演の内容からもう一つ、電車の優先シートの前で携帯電話を平気で使っている人が非常に多いと嘆いていた。ペースメーカーを入れている人が座っているかもしれないのに。これが飛行機なら、計器に異常をきたしては怖いと、電源を切る人がほとんど。自分に関係がなければ、そこに携帯電話を切ってほしいと思っている人がいるかもしれないということを、想像できないのが正直なところだろう。自分にも思い当たる節があり、反省したい。
 衆院選の公示まで10日余り。ここ何年かの政治を振り返ると、残念ながら国民の思いに想像力を働かせたようにはあまり感じられない。議席獲得のためにもっともらしいことをいう政治家が、本当にどれだけ有言実行してくれるのか、国民が想像力を研ぎ澄まして見定めなければならない。政治なんて自分には関係ないという無関心さが、この国を駄目にしている意識を持つ必要がある。
       (片)