安珍清姫伝説の舞台で古典芸能のメッカとして知られる天音山千手院道成寺の境内が、 国の史跡指定へ答申された。 指定されれば県内で27件目、 日高地方では初めてとなる。 道成寺は、 701年 (大宝元年) に文武天皇の勅願で創建された県内最古の寺院。 1300年以上にもわたって教えが脈々と受け継がれており、 観音信仰を中心とする我が国の信仰のあり方を知る上で重要な史跡と評価された。  文化庁の文化審議会が16日、道成寺境内の史跡新指定を文部科学大臣に答申。本年度内に正式決定する。
 指定される境内は2万9487・71平方㍍。伽藍(がらん)配置の変遷は発掘調査によって明らかになっている。創建当時は現在の本堂の場所に仏堂があり、8世紀後半には観世音寺式の伽藍が完成。平安時代前期に講堂の大修理、1357年(正平12年)には講堂があった場所に本堂を再建するなどたびたび熱心に手が入れられていた。一時やんでいたが、江戸時代中期に入り紀伊徳川家の庇護を受けて1702年(元禄15年)に書院、元禄期に仁王門、1763年(宝暦13年)には三重塔が完成。1812年から15年(文化9年~12年)には大修理が行われている。
 「道成寺もの」と呼ばれる能や歌舞伎の古典芸能でも安珍清姫伝説の舞台として広く知られ、本尊の千手観音菩薩像、日光菩薩像、月光菩薩像の国宝3点など仏像をはじめ重要文化財指定の本堂や仁王門などの建造物、「道成寺縁起絵巻」など多くの文化財が残っていることから「日本の歴史の正しい理解のために重要な史跡」とされた。
 小野俊成住職は「道成寺は幸い現在まで1300年以上続いており、これまで遺跡とは意識されていなかったが、第一級の遺跡でもあることを評価していただけたと喜んでいます」と話している。
 今回、答申されたのは史跡名勝天然記念物の新指定17件、同追加指定など19件、登録記念物の新登録3件、重要文化的景観の新選定1件、同追加選定1件。県内では道成寺境内のほか、国指定名勝の和歌山市、養翠(ようすい)園の八千代亭跡などが追加指定される。