和高専など主催の次世代テクノサロンで、宮城県石巻市で海産物の製造販売を行っている㈱木の屋石巻水産の従業員2人から震災体験を聞いた。震災体験者の話はリアリティーがあり、いつも、防災意識を新たにさせられる。
 印象的だったのは津波直後の街の状況。道路は水とがれきで埋もれ、車を走らせることができないのはもちろん、泥水の下にあるくぎや木片でけがをしたり、ふたが開いたマンホールに落ちて骨折するなど、移動するにもリスクが高く、時間も普段の数倍かかる。寒い季節なら水の中に入ることもできず、避難した屋根の上で凍死する人もいたという。また道路が使えなければ給水車も来ることができず、食料もない。流された缶詰やペットボトルは重油やガソリンで汚染され、洗浄しなければ食べられないが、洗浄する水がない。2人は「助かった命をどうつなげるかが重要」と話していた。
 日高地方の各自治体や団体も津波対策への取り組みを進めているが、ここまで踏み込んだ想定をしているだろうか。印南町では全住民3日分の食料・水を津波が来ない地域4カ所で保管することを計画しているが、今回の話を聞く限りでは数㍍進むのも困難な中、必要な人の手に届くか疑問だ。また現在、各地で行われている訓練は津波からの避難に重点を置いているように思う。もちろんまず津波から命を守ることが最重要なのは今後も変わらず、訓練を続けていくことは必要だが、今回の講演で地震の恐ろしさは津波襲来後も続くことを強く感じた。今後の訓練では、避難に加え、避難後の過酷な状況をいかに生き延びるかも視野に入れた新たな段階に進むときではないだろうか。       (城)