振り込め詐欺の被害が後を絶たない。年々手口が巧妙化し、複数で消費者をだますような手法もみられる。インターネットで見つけたあるデータによると、昨年1年間の被害総額は実に110億円にも上るという。人間の心理をついて心の隙間から悪の手は侵入する。「自分は絶対にだまされない」と果たして言い切れるだろうか。
 詐欺とは偽って利益を図ること。政治の世界でも詐欺まがいのことが起こっている。選挙マニフェストだ。平成21年の衆議院選では公務員の人件費2割削減、子ども手当1人当たり月額2万6000円の支給などという訴えで候補者や政党を決めて投票した有権者も多かったのではなかろうか。しかし実際は実現されず、マニフェストになかった消費増税が先の国会で可決される始末。国民との約束に違反したことになり、有権者にとってはまったく詐欺に遭ったという感覚だろう。
 振り込め詐欺などに関わらず、当事者間の約束は履行しない方にもちろん非がある。しかし、選挙では「そういう政党や候補者を選んだ有権者にも責任がある」という声も聞く。約束を破棄した政治家だけでなく、だまされた有権者にも非があるということなのか。それなら、政策論争は無意味になると思うのだが。
 最近の新聞やテレビなどの報道では、近いうちに衆議院の解散があるのではないかという見方が強い。選挙となれば各党や各立候補者がマニフェストをアピールして訴える。しかし、その訴えの内容自体が信用できないというなら有権者の判断基準は難しい。くれぐれも詐欺に遭わないように気をつけねばならない。    (雄)