「まけないタオル」をご存知だろうか。普通のタオルより短い長さ50㌢のタオル。首にも頭にもまけない、そして、まけそうになる自分にまけない。巻けないと負けないの語呂合わせから生まれた東日本大震災の被災者支援として、住職さんたちを中心にして全国に広まっている活動だ。1000円以上1口でタオル1枚が支援者に送られる。被災地での支援活動に充てられるほか、タオルは被災者にも届けられ、そろいのタオルを持つことで心をつなげていく。決して負けないでという強いメッセージをタオルに託し、その思いが少しでも被災者を元気づけられるなら送る側もうれしい。いろんな形の支援があるものだと感心した。
 まけないタオルは、先日、日高郡佛教会の講演会で講師を務めた「歌う尼さん」こと、シンガーソングライターで奈良県の住職、やなせななさんが紹介してくれたので初めて知った。やなせさん自身この活動に参加しており、復興支援歌『まけないタオル』を作曲し、会場でも披露してくれた。個人的な感想で恐縮だが、これほど澄んだ歌声を聴いたのは初めてで、墓参りにいったあと穏やかな気持ちになるのに似たような、心が洗われるひとときを過ごさせてもらった。
 多くの被災者の言葉に耳を傾けてきたやなせさんの法話で最も心に残ったのは、「いまここにいるのは、決して当たり前ではない」という言葉。いまを一生懸命生きることの大切さを表現した言葉だろう。ふと立ち止まって自分を見つめなおしたくなる。宗派を超えて講演されているということだが、心の教育が求められているいま、ぜひとも小中学生たちに聴いてほしい講演だと思った。       (片)