とある選挙の取材で「『こんなにたくさんの事業をやりました』なんて自分で手柄を自慢ばかりするような候補者はだめだ」という声を聞いた。選挙になれば実績はもちろんのこと、人柄、血縁、地縁、何もかもアピールし合うものとは分かっているが、確かにその言葉には共感する。実績は自らPRするのではなく、有権者が判断するもの。あまり自分から発信すると、受け取る側は嫌気が差す。
 総選挙が「近いうち」にある。政権与党のチラシを見て、前出の声が頭に浮かんだ。事細かに3年間の実績を並べており、読むのも見るのもしんどい。政権与党にだからこそ厳しくいうが、それらのことをやったといって、果たしてこの国はよくなったと胸を張れるのだろうか。前政権時代から前に進むどころか後退していないか。
 この国のかじ取りを任された政権与党として真摯に政治に取り組んできたのなら、できたことより、自分たちが大風呂敷を広げてできなかったことの反省、できなかった理由を書き記すべき。政権交代に期待した一有権者として、実績よりも子育て手当、高速無料化、ガソリン暫定税率廃止、天下り禁止、コンクリートから人への政治等々。目玉政策が実現できなかったのはなぜかを知りたい。反省を飛び越え、もう次のマニフェストの話も出ており、不信感を持つなという方が無理。
 野党にも同じことがいえる。なぜ、いまのような状況になったのか。総括が必要だ。民間の事業では当たり前の「計画の実行、分析・評価、修正、実行」というサイクルをローリングと呼ぶが、政治にはないのだろうか。近いうちの総選挙を前に、こんな政治には未来を託せないとの思いが募っていく。       (賀)