昨年12月の津波防災地域づくりに関する法律の施行を受け、 国土交通省と県が各市町の津波防災地域づくり推進計画作成を支援するための連絡会議が1日、 全国で初めて発足した。 同日、 和歌山市内で第1回の会合が開かれ、 近畿地方整備局が県内沿岸部の20市町の関係者に東海・東南海・南海3連動地震と津波に備えた計画作りの手順等を説明。 市町からは国、 県に対し、 詳細なデータの提供やハード面の対策への支援等を求める意見が出された。
 昨年の東日本大震災を教訓に、 地震と津波に強いまちづくりを進めるため、 12月に施行された法律では、 ハード・ソフトの多重防御による津波防災地域づくりを推進することが示された。 これにより、 市町村は国土交通大臣が定める基本方針に基づき、 知事が設定する津波浸水想定を踏まえ、 総合的な津波防災地域づくりを進める推進計画を作成できるようになり、 今回、 市町村の計画づくりを支援する目的で 「東海・東南海・南海3連動地震・津波に強い和歌山地域づくり連絡会議」 が設立された。
 参加しているのは、 国 (近畿地方整備局) と県のほか、 和歌山市から新宮市までの沿岸20市町。 日高地方は御坊、 美浜、 日高、 由良、 印南、 みなべの6市町が参加している。 国と県は、 ことし3月に内閣府が発表した南海トラフ巨大地震の震度・津波高推計結果を受け、 本年度中に新たな地震被害・津波浸水想定を出す予定。 市町は国、 県ほか専門家などが算定する津波高、 市街地への津波の氾濫計算等の情報提供を受け、 ことし秋までにそれぞれのまちごとの地域づくりの方向性を出し、 その後、 協議会を設置のうえ推進計画づくりを進める。
 この日の会議では、 柏木征夫御坊市長が最大17・4㍍という津波高の数字が公表された南海トラフ地震の推計結果について、 「御坊は市民の8割程度が低い地域に住んでいる。 実際、 こんな津波がくれば、 日高川町の役場近くまで浸水することになり、 市民はこの数字をたいへん気にしている。 いまとなっては、 私がいくら 『1000年に1回くるかこないか』 と説明しても、 その不安を打ち消すことができない」 と、 一方的な情報提供のあり方に首をかしげ、 さらに 「今回のこの数字は昭和、 安政の南海地震の実績、 史実と整合性があるのかどうかの検証もしっかりお願いしたい」 と要望した。
 また、 県内市町で最大の津波高 (18・3㍍) とされたすさみ町の岩田勉町長も、 先の内閣府の推計結果公表を 「突然で行政的にも何の準備もなく、 まったくフォローもない。 地域の計画作りの末端は市町村であり、 国はもっと生きたデータを提供すべき」 と批判。住宅等の高台避難についても地形的、 財政的に難しいことを訴えたうえ、 「高齢者は避難路を整備しても逃げるのは無理という人も多く、 災害弱者を守るには集団での高台移転しか方法がないと思う。これはうちだけでなく、 沿岸のまちはどこも同じ」 とし、 ハード面の対策への支援を求めた。
 県地震・津波被害想定検討委員会の第1回会合が3日、 県庁南別館で開かれる。 南海トラフの巨大地震の地震被害想定、 津波浸水予測を検討する会議で、 河田惠昭関西大社会安全学部長ら防災、 津波、 地震、 地盤などの専門家6人で構成。 初会合は午後3時から、 仁坂吉伸知事も出席する。