和歌山高専前副校長、藤本晶さんの本紙連載コラム「フジモトの実践教育論」は独自の教育論を展開する読みごたえある内容で、いつも勉強させていただいている。今月は「子ども達に積極性と創造性を培う環境を」との趣旨で書かれており、感銘を受けた。創造性という言葉から、先日取材した前嶋順子さん(日高町)の古希記念大津絵展を連想した◆前嶋さんのすごいところは、企画段階から「空間プロデュース」に情熱を注いでいること。作品を見せることに主眼を置く通常の作品展とは様相が違い、作品をモチーフとした「場」の構築が重んじられている。風刺画や教訓画という性質を持つ素朴な大津絵に、粋な色っぽさが魅力の浮世絵を合わせる。さらに趣味の旅行で手に入れた民芸品が、持ち味に合わせ作品と並べて配置される。新感覚の美がそこに出現する◆取材していて感動するのは、その自由自在な発想のジャンプ力だ。骨董品や美術品にも趣味を持ち、テレビ等で見た美術展が気になると車を飛ばして出かけるという前嶋さん。そのフットワークの軽さには頭が下がる。たとえどんなに経済力や時間のある人でも、それだけでこんなことはできない。粋な「本気の遊び心」が必要なのだ◆藤本さんが今回のコラムで懸念されていたのは、今の子どもたちを取り巻く便利すぎる環境だ。至れり尽くせり、想像の余地のない遊び空間からは「本気の遊び心」も生まれようがない。本気で面白いと思うことを徹底的に追求する。必要なことだけを適当にこなすという生き方では味わえない充実感がそこにはある。そんな心を持ち続けることが、人生を2倍にも10倍にも楽しくする。 (里)