例えばの話。喫茶店を経営。ずっとコーヒーを中心に売ってきたが、最近めっきりお客さんの数が減ってきた。周囲に自販機がどんどんと設置され、近くには定額で何杯でもお代わりOKのおしゃれな店ができた。売り上げは右肩下がり、ついに赤字。家族がいる。借金を重ねていくわけにはいかない。さて、どうするか。当然、コーヒーをメーンに売っていてもだめ。他店に負けないサービス、メニューを考え、対抗していかなければ廃業へ追い込まれるというのは子どもにも理解できるだろう。
 「自分をより高い能力、より大きい成功へ導こう。より充実した生き方、より高い人格などを獲得したい」。世の中、不況が続くせいか、そんな「自己啓発」と呼ばれるものが流行っているようで、本やセミナーも大人気という。自分をよくしようというのはいいことだが、会社でいうと上司、先輩、スポーツなら監督、コーチに何をいわれても、また本を読んだりセミナーに出席しても自分が変わらなければ意味も効果もない。使った金、愛情を持つ人たちの気持ちもムダに終わる。
 進化論で知られるダーウィンの有名な名言。生き残る種というのは最も強いものでもなければ、最も知的なものでもない。最も変化に適応できる種だ。変化に適応、すなわち自分が変わることだと思う。ライバル店が出現したら自分の店が変わらなければ終わり。社会のせい、政治のせい、会社のせい、上司のせい。他に責任をなすりつけがちな時代だが、結局は自分の問題と理解しなければ自己啓発も何もない。記者なら取材へ行く道を変えるだけで見える世界が変わる。自己啓発ブームも、自分の生き方を見つめ直すいい機会。マンネリではいけないと教えられる。   (賀)