第96回アカデミー賞で、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞を受賞した。「千と千尋の神隠し」に続き2度目。また、その数日前には、世界的な人気漫画・アニメ「ドラゴンボール」の作者である漫画家の鳥山明さんの急逝が報じられた。一方は快挙、一方は悲しい知らせだが、どちらのニュースからも日本のアニメがいかに世界で愛されているかが伝わってきた。鳥山さんについてはイギリスや中国など各国の外務省も追悼の言葉を寄せ、中東のメディアも速報したという◆思えば、幼い頃に楽しんだテレビアニメは多くが「冒険」とついていたような気がする。「ガンバの冒険」「シンドバッドの冒険」「みつばちマーヤの冒険」「ピコリーノの冒険」「アンデス少年ペペロの冒険」「冒険コロボックル」「トム・ソーヤーの冒険」…タイトルに冒険とついてはいなかったが、若き日の宮崎駿氏が関わった「母をたずねて三千里」も冒険の要素満載だった。◆荒海で、砂漠で、虫の世界で、無人島で、南米の荒野で。子どもたちの身近にはないいろんな世界を舞台に、魅力的なキャラクターたちに自分を託し、出会いと驚きと発見の連続。性別も洋の東西も問わず、子どもには心を成長させるために冒険の物語が必要なのだと思う。「君たちはどう生きるか」も「ドラゴンボール」も、広い意味で少年が世界と出会い、成長していく物語だ◆日本で独自の進化を遂げたアニメーションという表現は、優れたクリエイターとそれを支える優れたスタッフによる冒険物語という最高のコンテンツを得て、世界の子どもたちの心の中へと種をまき、そして大きく枝葉を広げた。その果実は、今も大きくふくらみ続けている。(里)