旧浦神小屋上で打ち上げ失敗の白煙に落胆する見学者

 串本町の小型ロケット発射場、スペースポート紀伊で13日、スペースワン株式会社のロケット「カイロス」初号機の打ち上げが行われ、予定時刻の発射直後、機体が爆発。国内民間企業初のロケット打ち上げは失敗した。公式見学場では多くの見物人が打ち上げを見守ったが、まさかの事態に悲鳴と落胆の声が聞かれた。同社は飛行中断措置をとったと発表した。

 ロケットの打ち上げは当初、2021年度中を予定していたが、コロナや世界情勢の影響で部品が調達できず、これまで打ち上げを5度延期。今月9日の前回打ち上げでは発射のカウントダウンまでしていたが、警戒海域に船舶が入ったため、急きょ延期。ロケットの機器にトラブルはなく、4日後の再挑戦となった。ロケットには内閣衛星情報センターの小型衛星を搭載しており、予定通り午前11時すぎに発射されたが、数秒後に爆発。全長18㍍の機体は砕け散り、周囲の山に落下して火災のような炎が広がった。

 発射場から約2㌔離れた田原海水浴場(串本町田原)と旧浦神小学校(那智勝浦町浦神)の2カ所に設けられ公式見学場では9日ほどではないものの、多くの見物人が固唾(かたず)をのんで歴史的瞬間に注目。夢と希望を乗せた白い機体が白煙を噴き上げながら宇宙へ飛び立つのを信じて見守ったが、会場は落胆の声に包まれた。

 旧浦神小学校の見学場には約700人が集まり、カウントダウン後に発射場のある南西の方角の山の向こうから火花と白煙が上がると、見物人から「どうしたの?」「失敗した?」「信じられない」などと、悲鳴のような声が湧き上がった。

 前回に続き家族で来た有田川町の坂上勘祐君(11)は「火花が上がっただけでロケットの姿は見えませんでした。でもテレビとかじゃなく、すごく迫力がありました」。橋本市の山迫暁(さとる)さん(46)は「今回こそはと期待していたので、とても残念。民間でのロケット打ち上げは難しいのかもしれないが、またチャレンジしてほしい」。旧浦神小をロケット見学用に再整備し、関連企業誘致など地域活性化に期待を寄せる堀順一郎那智勝浦町長は「ロケットの打ち上げは世界的にも全て成功しているわけではない。今回着火までいったので、ぜひ原因を究明して成功させてほしい」と話していた。