後ろ向きに進水する「みらい」

 由良町吹井、畑山造船株式会社(畑山彰夫代表取締役)で13日、新たなタグボート「みらい」の進水式が行われた。昨年8月の起工以来、原材料高騰や部品の納品遅れなどを受けながらも予定通り間に合わせ、畑山代表は「『未来に向けて』との思い通り多数の最新装備を充実させた最高のタグボート」と自信を見せる。

 タグボートは曳船(えいせん)などとも呼ばれ、小さいながらも馬力が大きく、小回りがきき、湾内などで大型船が安全に離着岸できるようにロープで牽引したり、船先で押すなどして誘導・補助を行う。

 みらいは総トン数285㌧、全長38㍍、型幅9・6㍍、型深3・5㍍。主力エンジンは2200馬力を2基搭載し4400馬力(ニイガタ6L28HX)で、360度旋回推進機スラスターを採用し、操船性と省エネ性を向上。最高速力15・0ノット(時速約30㌔)、曳航力は64㌧。同社では3隻目となる船員室の広さなどの規定をクリアした「海上労働条約」の適合船。このほか消防装置や無線機、レーダー、オートパイロットなどで各種最新装備を充実させた。

 進水式では神事の後、「みらい」が後ろ向きに海に入っていき、陸と繋がれたロープが引っ張られて船首のくす玉が割れ、紙吹雪が舞う中、水しぶきを上げて進水した。今後、点検などに入り、3月末に発注者の関西港湾サービス株式会社(井内義之社長)に引き渡される。

 井内社長は「社員の公募で未来に向かっていこうとの思いで『みらい』に決まった。大阪湾を中心に全国で活躍する」と話し、畑山代表は「世界情勢の影響を受けたが、無事に予定通り間に合わすことができた。苦労した分、最高のタグボートとなった」と話している。

 同社は1932年創業。みらいは307隻目で、近年造船が多いタグボートでは67隻目。従業員約30人と小さな町の造船所ながら実績と経験で多くの顧客からの信頼を得ている。