わさびの苗を植える真妻やまびこ塾と高機能炭和歌山研究所のメンバー(印南町田ノ垣内で)

 印南町真妻地区が発祥の「真妻わさび」の生産を復活させようと、地元のまちづくり団体真妻やまびこ塾(山本育男塾長)と高機能炭和歌山研究所(中田稔所長)が、県の農業農村活性化支援モデル事業の補助を受け、真妻わさび栽培の実証実験をスタートさせた。25日、両団体のメンバーが山あいの耕作放棄地を活用した畑に苗を定植。その場所が栽培に適しているかを検証し、うまくいけば耕作放棄地を活用した栽培地を増やしたいという。

 真妻わさびは明治時代から栽培が始まったとされ、山間部の涼しい気候と豊富な湧き水が真妻地域に適し、昭和初期までは盛んに栽培されていた。しかし、1953年7月18日に発生した紀州大水害の被害を受け、湧き水も少なくなり栽培地が一気に減少。今では地域で生産しているわさび農家は平井わさび園だけとなっている。

 今回の実験では、田ノ垣内(たのがいと)の元は水田だった山あいの耕作放棄地を活用し、流水で育てる沢わさびを栽培。直径約50㌢のパイプを半分に切り、段差をつけて畑に設置。パイプの中には砂利を敷き詰め、山の上流から流れる水の量を調節しながら育てていく。また、わさびは自身が出す毒素(アレロパシー物質)で自家中毒を起こすとされる。土壌に毒素が蓄積すればわさびの芋の部分が大きく育たなくなるため、毒素を吸着する水質浄化の肥料として、和歌山高機能炭研究所が製造した梅の種の炭と一緒に苗を植えることにした。

 この日は畑に100本の苗を定植。炭と一緒に植える区画と植えない区画を50本ずつに分け、成長の違いを比較していく。平井わさび園代表の平井健さん(42)も参加し、植え方のコツや育て方についてアドバイス。「真妻わさびは栽培がとても難しい。少ない水でどこまで育つか分からないが、環境はいいと思うので、立派に育つことを期待したい」と話した。わさびの芋が育つまでには最低でも2年はかかるという。

 真妻やまびこ塾の山本塾長(61)は「水が少なくても栽培できれば、栽培に適した土地もたくさん見つけられる。栽培地を増やして、真妻わさびの生産を増やせれば」と話している。