先日他界された、脚本家山田太一氏をテーマとします。

 「獅子の時代」(教育史料出版)

 1980年放映の幕末を描くNHK大河。菅原文太演じる架空の会津藩士銑次が戦いの中の城内へ、計略で無事帰る場面をご紹介。
 城内
享「(顔をあげる)おい」
隣の兵「うむ?」
享「なんだ、ありゃあ(と耳をすます)」
 遠くから彼岸獅子の囃子が聴こえてくる。(略)
 城下の道
 行進する会津隊。呆然と見ている政府軍。
N(ナレーター)「政府軍は、あまりの堂々とした行進に、まさか会津兵とは思えず、あやしみながらただ見送るだけだったという」(略)
 城門の前
 門ひらかれる。かなり近づいている囃子。(略)
 城門
銑次「走れっ!」
 一行、ひらかれた城門を目ざして走る。
 政府軍陣地
隊長「撃てえ! なんばしとる! 撃て、撃てえ(と慌てる)」
 城門
 急速に閉まる。(略)
 城門の中
銑次「(満足の思いで、山川の肩をどやす)」
山川「(うれしくて、銑次の腕を叩き返す)」(略)次第に笑いがさざなみのように伝わり、会津隊の一行、大笑いとなる。(略)
N「凄惨な出来事ばかりの会津攻防戦の中で、唯ひとつの痛快なエピソードとして、今も語りつがれている通り囃子作戦であった」