ハスの草木染めを乾燥させる参加者を前に説明する志村さん㊨

 御坊市藤田町吉田のハス池公園「舞妃蓮の郷」を管理する特定非営利活動法人北吉田蓮の郷のメンバーが、京都の草木染め作家志村宏さん(42)の協力を得て、ハスを染料にした草木染めを体験した。

 蓮の郷は2015年に公園を整備して舞妃蓮を植栽。草木染めに使うのは花托の部分で、花が咲き終わったあとに刈り取り、例年は1万個近く、今年も約4000個を採取。これまではほとんど焼却処分していたが、乾燥させれば長期保存することも可能で、草木染めの染料に利用する方向を模索していくことになった。

 志村さんは染織家・紬織の人間国宝志村ふくみさんの孫で、小さい頃から工房で染織を目にして自然観が染みついており、植物染料の採集や育成、染色方法の研究などを中心に活動。以前からハスの草木染めにも興味を持っており、蓮の郷の取り組みに賛同した。体験会では舞妃蓮と大賀蓮の2種類の花托をそれぞれ煮出した染液にシルクのハンカチを浸して染める方法を指導。色を重ねる回数や、最後の仕上げに使う媒染剤の種類などで微妙に色の風合いが変化することも説明した。完成したハンカチは少し赤みをさした温かみのあるベージュ色に染まっていた。

 志村さんは「捨てられていた花托を草木染めに利用することで、その植物の生命を全うできる。ハスの染料はあまりなく、北吉田のハス池が日本で初めてハス染料の産地になる可能性が十分にある」。蓮の郷の佐竹成公理事長は「手探りの状態ですが、将来的には観光客らに草木染め体験イベントができないか考えていきたい」と話している。