一年納めの九州場所も中日を過ぎ、熱海富士、豪ノ山ら日本人若手力士が連日、激しい当たりで土俵を沸かせている。テレビを見ながら、客の不入りだけでなく何か物足りなさを感じていたが、それが何かに気づいてがっかりした。
土俵には2人の力士のほかに、軍配を手に勝負をさばく行司がいる。最高位の木村庄之助が8年以上前から不在のなか、9月の秋場所まで結びの一番を裁くナンバー2の立行司式守伊之助の前に登場していた六代木村玉治郎がいない。
秋場所後、協会は伊之助の来年初場所からの庄之助昇進を決定した。であれば、同時に三役格筆頭の玉治郎が立行司(伊之助)に昇格するところだが、なぜか玉治郎は据え置かれた。行司は65歳で定年となるため、現伊之助と玉治郎の年齢をみれば、玉治郎の庄之助昇格は断たれてしまった。
現伊之助は健康面もあるとはいえ、土俵での転倒、差し違えが多く、今年の名古屋ではまわし待ったの際、軍配を土俵に落とすミスを犯した。一方の玉治郎は「はっきょーいながっと、ながながっと…」の独特なかけ声が心地よく、フットワークとさばきの正確さを考えても、立行司となるになんら不足はないはず。
玉治郎の突然の退職理由は分からないが、協会の決定と対応に首をかしげる相撲ファンは少なくない。伝統を守るべき大相撲の世界にあって、年功序列を否定するつもりはないが、玉治郎の立行司昇格見送りは腑に落ちない。
動きにくい装束で立ち回る行司も力士と同様、序ノ口から幕下、十両、幕内…と階段を上がっていく。三役格、立行司ともなれば体力的にきつく、危険な仕事でもある。年齢に関係なく、能力・成果主義に切り替えるべきではないか。(静)