印南町で11・12日、切目王子跡の国史跡指定を記念したイベントが盛大に行われた。島根県と愛知県からゆかりの神楽の奉納舞、大規模な餅まき、そして秋の夜空を彩る3000発の花火大会。多彩な催しが目白押しで、地元が誇る文化遺産の国史跡指定を祝った。

 イベント2日間の様子を取材したが、会場はまさに盆と正月が一緒に来たかのようなにぎわいだった。新型コロナが5類に移行してから半年が経ち、今までの制限のうっぷんを晴らす感じもあったかもしれないが、それ以上に、まちのために長い時間をかけてイベントの準備を行ってきた関係者たちの想いが強く感じられた気がする。

 切目王子跡の国史跡指定に向けては、数年前から教委や地元の有志らが中心となり働きかけを行ってきた。切目王子は世界遺産エリアの熊野路の入り口に位置し、熊野古道九十九王子のなかでも格式高い五体王子の一つとして知られる。かつては後鳥羽上皇など多くの要人が集い、そこで開かれた歌会の懐紙は国宝にもなっているほどだ。将来的には世界遺産の追加登録を目指しており、国史跡の指定はその大きな足がかりになったといえる。

 話はイベントに戻るが、内容は切目王子の歴史の深さを伝えるだけでなく、港の活気があふれる中、地元で活躍する人たちが集い、印南の魅力を詰め込んだものとなっていた。特に花火大会は、たくさんの人の労力、資金、時間がかけられる。物価高騰にあえぐ今、中止に追い込まれる自治体もある。そんな中で地元から多くの賛同者を集め、3000発の花火が打ち上げられたのはすごいこと。印南港に上がる華麗な花火を見ながら、まちの底力というものをまざまざと見せつけられた。(鞘)