県立医科大学は、心臓病患者の高度先進医療を専門に行う「心臓血管病センター」を開設した。外科と内科の医師約60人に加え、看護師、薬剤師、リハビリなど多職種のスタッフ約160人体制で、より充実した医療をより多くの患者に提供。今後は新たな高度医療の導入や開発、県内診療ネットワークの整備も目指し、過去に全国ワースト1となった心疾患死亡率の改善の中核を担う。

 同大では約10年前から心臓血管外科医と循環器内科医が中心となって「ハートチーム」を組織し、意見交換しながら心臓病患者に最善の医療を提供してきた。心疾患の新しい治療法が続々と開発されるなか、数年前からはさらに他部門のスタッフを加えたセンターの必要性を訴えてきた。

 ここ数年は最新機器が導入され、専門技術を持つ医師が力を存分に発揮できる環境が飛躍的に整い、カテーテル治療件数も右肩上がりに増え、2年前からはカテーテル大動脈弁置換術が国立循環器病研究センターの症例数を上回る実績を残している。手術を待つ患者が増える中、各部門のエキスパートが集まったプロジェクトチームとして、「患者ファースト」のセンター開設が実現した。

 人口10万人当たりの心疾患死亡率は、2019年に和歌山県が全国ワースト1となったが、ここ2年でワースト8にまで改善しており、センターが専門的な高度医療の提供を担うことで、一層の改善が期待される。今後は新たなカテーテル手術を行なえる最新機器の導入も決まっており、不整脈に起因する脳梗塞予防のための手術など高度医療を提供。すでに開設している脳卒中センターや腎臓病診療との統合運用、県内医療機関とネットワークを構築し、高度治療が必要な患者を見逃さない体制を整えていきたい考え。新しい高度な治療法の研究にも積極的に取り組んでいく。

 14日に同大で会見したセンター長を務める西村好晴心臓血管外科教授、副センター長の田中篤循環器内科教授は「心臓病疾患の死亡率が高いので、少しでもいい方向に向けていきたい。県民の命を守りたい」と意気込んだ。